セッションレポート
日本音楽療法学会認定音楽療法士
藤井文香
今回ははどんぐり、日本地図、歌に纏わる写真が掲載されている冊子、コーヒー豆など、実物や道具類を豊富に用いてセッションを行った。歌唱活動にそれらをプラスしたことで、歌への興味関心や理解が深まり、聴覚の他に視覚・嗅覚・触覚への刺激も加わり、心身の活性に効果的であった。また、発言や会話の糸口となり、メンバーやスタッフとのコミュニケーションに広がりが見られている。
1)童謡「どんぐりころころ」
馴染みの童謡を合唱し、和やかにセッションへと導入する。
声量があり最後まで明確に歌える。
実物のどんぐりを各自に配り両手で擦り合わせマッサージ
「どんぐりころころ~♪」の部分を歌いながら擦る。笑顔が表れる。
「大きなどんぐりね!」等と周囲との会話が見られる。和やかなコミュニケーションが広がり、緊張が緩和される。
2)唱歌「一月一日」
最初に1番のみ無伴奏で歌う。
明確な歌唱を確認し、2番までピアノ伴奏により歌う。声量があり最後まで明確に合唱する。
「この歌はどこで歌いましたか?」とセラピストが質問すると、
「元旦に学校で歌った!」と口々に発言する。また、
「皆さんが小学生の頃は元旦に登校されたのですよね?」と問いかけると、
「そうそう!」と頷く方が多く見られた。更にその日の様子を尋ねると、以下の様な回答がある。
「紅白まんじゅうを頂いた。」
「えんじ色の袴を履いて登校した。」
「普段よりも良い服装で登校した。」
「校長先生が教育勅語を読まれた。」etc
どの方にも共通する思い出話に共感が生じ、昔を懐かしむような表情が表れた。
3)季節の歌「津軽海峡冬景色」
歌詞理解
セラピストのリードで1番のみ無伴奏で歌唱し、旋律の確認を行う。
長めの歌詞につき、歌詞幕を棒で指し歌唱の介助を行う。
馴染みの演歌曲であるためか、声量もあり明確に歌える。
拳を上げてリズムを取ったり、マイクの代わりとなる打楽器を手渡し歌ってもらうなど熱唱を演出する。
オリジナルよりも低い音階で伴奏を設定すると、最後の「あ~津軽海峡冬景色♪」(最高音を含み歌が最も盛り上がる箇所)を充分に発声し歌い終えることが出来た。また、その表情から歌い切ったことへの充足感が感じられた。
「上野発の夜行列車に乗って歌の主人公はどこに着いたのでしょうか?」とセラピストが質問すると、
「青森」と数名の方が回答する。更に
「青森で降りて次は何に乗ったのでしょうか?」と問いかけると、
「連絡船」と回答があり
「北海道へ渡ったのよ!」等と主人公の辿った行程を考え始める。
「何故この女性は北海道に帰るのでしょうね?」とセラピストが質問すると、
「それは失恋したからよ!」と前列の女性から回答がある。そして、
「私は青森出身なので青函連絡船にもよく乗ったのよ!」と懐かしそうな表情で発言されていた。
4人一組で日本地図を見てもらい、主人公が辿ったルート(上野→青森→函館)や歌詞の中に出てくる竜飛岬などを確認する。
また、冬の津軽海峡や青函連絡船の写真が掲載されている冊子を見てもらうと、どの方も意欲的に目を通されていた。
実際に竜飛岬を訪れ歌碑の前に立った時の状況を皆さんに話してもらう。
これらのことにより、歌詞のイメージが膨らみ、歌への興味・関心・理解が深まった。
地図や冊子を見ながら周囲との会話が活発になり、コミュニケーションも広がる。
最後にジャンべ演奏を加えて仕上げの合唱を行う。
歌への理解が深まると、歌唱する表情にも変化が見られ、充実感が感じられた。
4)馴染みの歌「一杯のコーヒーから」
コーヒー豆を使った嗅覚刺激
セラピストのリードで1番のみ歌唱し、旋律の確認を行う。
4番まである曲だが、プログラム終盤の疲労度を考慮して3番までとする。
ピアノ伴奏にジャンべ演奏を加えて最後まで歌う。
歌詞の内容や旋律の特性からか、楽しそうな表情で歌われている方が多い。
実際に粉状に挽いたコーヒー豆を回して匂いを嗅いでもらう。
「良い匂いね~」
「コーヒー飲みたくなったわ!」などの発言や笑顔も見られ、心身の活性が感じられた。
「初めてコーヒーを飲まれたのはいつ頃でしょうか?」と質問すると、
「大人になってからかしら?」等と数名から回答がある。
「親には帰宅が遅くなると電話をして、始めて喫茶店に連れて行ってもらいコーヒーを飲んだ思い出があります。その時の人が、今は毎日口喧嘩をしている主人です。」と後列の女性が挙手をして語られる。
皆さんから笑いが起こり、和やかな雰囲気で前半を終了する。