2017/3/8 介護予防教室で音楽療法♪

セッションレポート

 

日本音楽療法学会認定音楽療法士

藤井文香

 

 3月に入り春の訪れを感じられるようなプログラムを構成する。

「嬉しいひな祭り」では、人形の町という地域性から歌への興味・理解がより感じられ、セラピストの問いかけに対しても積極的な反応が見られた。

 また、「北国の春」「旅の夜風」でも、回想や情景をイメージしていく中で自発的な発言や会話が多く表れた。その中で、対象者の方々の思い出とともに、その方のお人柄が滲み出るセッションになったと思う。

 

 

1)季節の歌「うれしいひな祭り」

 

※季節を感じ心身共に豊かに 運動と脳トレ 回想により発言を促す

  • 歌詞幕を貼って歌唱する。声量もあり最後まで明確に歌える。
  • セラピストが歌詞(1番)を歌いながら、歌詞と合致する運動を提示する。どの方もセラピストの動きに注目し模倣する。2回目には、ほぼ全員が運動をマスターし笑顔も見られた。歌唱と運動を同時に行うことで、脳トレ効果が得られたと思う。
  • 雛壇を想像しながら、最上段から下段へと順番に飾る物を尋ねると、口々に雛飾りの人形や道具を挙げる。
    お内裏様、お雛様、金屏風、ぼんぼり、三人官女、五人囃子、右大臣左大臣、士丁、桃と橘、菱餅、雛あられ、白酒(甘酒)、箪笥、長持、茶道具、鏡台etc
  • 最後にセラピストが持参したお雛様の掛け軸を見てもらう。掛け軸という珍しい形態のお雛様に関心を持って見られる方が多く、視覚を通して女性特有の美的好奇心も刺激されている。

 

2)馴染みの歌「北国の春」

 

※季節感を得る 歌詞からイメージを膨らませる 回想により発言を促す

  • 歌詞幕を貼り歌唱する。ゆったりとしたテンポで最後まで歌う。
  • 声量があり歌詞も明確に歌える。
  • しみじみとした表情で歌う方が多い。
  • セラピストが1番の歌詞「届いたおふくろの小さな包み」を指し、
    「包みの中にどんな物が入っているでしょうかね?」と質問すると以下の様な発言があった。
    「お米」「たらの芽」「蕗のとう」「故郷の便り」「お饅頭」「お酒」etc
    「お金」と答えた方は、青森出身の女性が結婚して小樽に住んでいた頃、夫と喧嘩し実家に帰りたいと思ったことがあった。小樽の駅に向かい青森への切符を買おうとしたが、お金が足りず実家に戻ることを諦めた。その時、実家から送金して貰えたらと思ったことを思い出した。この発言を全員が関心を持って受けとめ、他の対象者やスタッフから共感の声があがった。
  • セラピストが2番の歌詞「別れてもう5年あの娘はどうしてる」を指し、
    「この歌のモデルの男性は、別れて5年が経ってもまだ女性のことを思っているようですね。」と話すと、
    「男性の方が未練が残る」「いつまでも思っていて素敵です」etc の発言が表れた。

 

3)映画の歌「旅の夜風」

 

※回想により発言を促す 歌への理解を深め歌唱意欲を高める 歌唱による充足感を得る

  • 歌詞カードを持ち歌う。
  • 軽快な前奏が始まると、身体でリズムを取り歌い始める方もあり。
  • 4番までの長い歌ではあるが、最後までリズムに乗って歌える。
  • セラピストが「この歌は何の歌でしょうか?」と質問すると、
    「映画の歌」「愛染桂の歌」etc の回答がある。
  • また、「この映画はどんなお話でしょうか?」と尋ねると、
    「上原謙が出てた。」「田中絹代も出てた。」etcの発言があり、セラピストが対象者と共に以下の様なストーリーの確認を行う。
     大病院の御曹司で医師の津村浩三(上原謙)と、その病院で看護婦をしながら一人娘を育てている未亡人の高石かつ枝(田中絹代)の恋愛映画。ふたりは境遇の違いから周囲に結婚を反対され、すれ違いシーンも多い。しかし、津村家の菩提寺にある「愛染桂」と呼ばれる桂の樹に共に触れ(一緒に触るといつかは結ばれるという言い伝えがある)、その言い伝え通り最後にはハッピーエンドに終わる。
     ストーリーを確認する中で、「上原謙が素敵だった」という発言が多数あり、表情から気持ちの高揚が感じ取れた。また、この映画を見たという方も多く、俳優や女優に対する印象が強く残っているように思う。
  • 最後に再度歌唱する。
    1回目よりも声量が増し、表情も活性化されていた。歌への理解が深まることで歌唱意欲の高まりが感じられた。また、最後の部分「やがて芽をふく春が来る~♪」を歌い切ることで歌唱による充足感も得られている。
  • 後で「栃木県の方にも愛染桂の樹があり、見たことがあります。」と話をされる方もあり。